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しゃちょ。のメルマガジーヌ編集後記

#771「落ちてるわよ。」

どーも。しゃちょです。

「帽子落ちてるわよ。」

普通列車の車内にて、
私と同年配の女性が、
通路に落ちてる帽子を指さして、
わいわい楽しそうにお喋りしてた、
小学6年生くらいの、
女子4名グループのひとりに、
優しく話し掛けます。

私は通路を挟んで、
ちょうど真向いの席に座って、
その一部始終を、
見るともなしに見てたのよね。

「ありがとうございます!」

女性に話し掛けられた女子Aが、
指摘された帽子を拾って、
グループ内で唯ひとり、
帽子を被っていない女子Bを確認。

友達同士のお喋りの内容が、
完璧にツボに嵌まったのか、
涙を浮かべて笑ってる女子Bに、
「ねえねえ、帽子落ちてたよ。」
と、拾った帽子を手渡します。

その刹那、
帽子を女子Bに手渡そうと、
身体の向きを右に捻るべく、
女子Aが足を動かしたことによって、
ちょうど足の陰に隠れてた、
通路の隅に落ちてる白いマスク、
こいつが私の眼前に出現します。

と同時に、
急に目の前に現れたそのマスクを、
目敏く見つけたっぽい、
先程と同じ女性の、いやーな気配。

おいおいおい。
やめときなよ。
それ違うからやめときなよ。
言うんじゃないよ。
それ違うから絶対言わないでよ。

と、私は強い念を、
その同年配の彼女に送ったのですが、
そんな私ごときの念なんぞ、
彼女のハートに届く筈もなく、

「ねえ、マスクも落ちてるわよ。」

と、その私と同年配の女性、
再び、女子Aに話し掛けてしまいます。

うわ。やったわ。
やめときなよ。って、
これほど念を送ったのに。

「あ。どうもすみません!」

と、気持ちの良い笑顔で、
女性に返事をした女子Aは、
足元のマスクをさっと拾い、
数秒前と同じような感じで、
女子B、女子C、女子Dに、

「ね、マスクも落ちてるよ!」

と、拾ったマスクを見せると、
なかなかの盛り上がりだった、
女子B、女子C、女子Dが、
お喋りを一旦ストップさせ、
目玉を大きくして口々に言うには、

「わたしのじゃない。」

「わたしのじゃない。」

「わたしのじゃない。」

その瞬間、
誰のモノか分からない、
着用者不明のマスクを、
手に取ってしまった女子Aは、

「きっしょ!」

と、叫んで大爆笑!

それを耳にした、
女子B、女子C、女子Dも、

「きっも!」

と、大爆笑!

得体の知れない気持ち悪いマスクを、
うっかり拾ってしまった女子Aは、
元々あった場所に、
投げ捨てる訳にもいかず、
かといって、
自身で装着する訳もなく、
仲良し女子4人組、みんな揃って、
きゃあきゃあ、ぎゃあぎゃあ大騒ぎ。

真向いの席で、
一連の流れを見聞きしてた私も、
さすがに心の中で大爆笑!

きみたち、
それをおじさんによこしなさい。
おじさんが駅で捨てるから。

なーんて、
突然、外野から飛び入り参加して、
女の子たちに話し掛けるのも、
なんだか違う気もするし、
そもそも、同年配の女性も、
良かれと思っての行為であって、
彼女の顔を一瞥すると、
同年配のその女性は、
正露丸を3錠ほど、
一気に噛み潰したような顔をして、
肩を落として俯いてるし、
他方、女子Aは女子Aで、
未だ薄汚いマスクを指に引っ掛け、
ぎゃあぎゃあぎゃあぎゃあ叫んでるし、
一体全体、このケース、
何が正解で何が間違いなのか、
誰が正しくて誰がやらかしたのか、
分からなくなっているうちに、
目的地の高槻に着いた。