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しゃちょ。のメルマガジーヌ編集後記

#709推し活

どーも。しゃちょです。

先週、2月25日を持ちまして、
私の28年間に及ぶ推し活が終了しました。

幼少の頃から、
いわゆる芸能界にあまり興味が無く、
インターネットが普及する以前から、
朝も夜もテレビを観ないので、
推しのアイドルや女優さんもおらず、
そもそも、お茶の間の人気者であろう、
超有名タレントさんにしても、
顔と名前が一致しないどころか、
顔も名前も全然知らない。

といった、体たらくでありまして、
十代の頃からそれなりの頻度で遭遇する、
アイドルだと誰が好みなの?
タイプの女優さんは?
なーんてな質問に答えるのが、
ほんとに苦痛で苦痛でたまらなく、
ほんとに心から困るのよ。
だってほんとに誰も知らないし、
ひとつも興味が無いんだもんなあ。

まあ、歳を重ねて、
今では邦画も観るようになりましたが、
って、小津や溝口や黒澤や川島雄三、
成瀬巳喜男、小林正樹、岡本喜八、
相米慎二や市川準とかなのだけれども、
若い頃は洋画一本槍でありまして、
前述した女優さんでいうと誰?的な質問に、
ジュリー・デルピーです。とか、
クロエ・セヴィニーです。なんて、
適当に答えるのも何だかねえ。
生活を捧げるほど、推してもいないし、
質問者が聞きたい答とも違うだろうし。

とまあ、
そういう推しが不在の退屈な半生を、
ぼんやり過ごしてきた訳なのだけれども、
って、いや違う。そういえば一人いた!

裏切られ続けても、殺されかけても、
強烈に推しまくり続けた、あの男が。

こいつに世界でいちばん、
カネを突っ込んだのは私である。
と自負できる、あの男が。

という訳で、
私が28年間推してきた唯ひとりの人物。
その男、秋山真一郎。

先週の2/25に、
28年間の騎手生活に別れを告げ、
今後は調教師となるJRA所属の騎手であります。
みんな知ってるよね!

1998年。
デビュー2年目で神戸新聞杯を、
カネトシガバナーで勝利し、
JRA重賞初勝利を飾った瞬間も、
当時22歳だった私は、
府中競馬場の大型ビジョンの真ん前で、
彼の馬券を握って歓喜に震えておりました。

それから四半世紀。
いかなる時も秋山真一郎。
負けても負けても秋山真一郎。

秋山真一郎を追いかけ続けた28年間。
それが私の競馬人生でありました。

向こう1カ月の食費を含めた生活費として、
絶対に手を付けてはいけない3万円を、
秋山真一郎騎乗のナムラキントウンに託し、
結果、絶望と死の淵から這い上がり、
人目を忍ばず大粒の涙を流したのは、
あれは一体全体、何十年前の話だよ。。

もしも、あの時、秋山が来なかったら、
今の私は存在していない。
と、確実に言い切れる、
人生の大きな転機でありました。

2007年。オークス。
よし!勝った!と誰もが思った瞬間、
ゴール直前で差されて負けたベッラレイア。
悔し過ぎて、2カ月仕事になりませんでした。

2012年。NHKマイルカップ。
カレンブラックヒルに跨り、
55回目の挑戦で遂にG1初勝利を飾った瞬間、
彼との苦難の道のりが走馬灯のように浮かび、
嬉し過ぎて、2カ月仕事になりませんでした。

おーい!秋山!
なんで、直線で追わないのよ!
なんで、ムチを使わないのよ!

と、馬のことを第一に考えた彼の騎乗に、
何万回も何億回も裏切られ、
何千回も殺されかけましたが、
昨年、彼の引退が発表されると、
放心状態に陥り2カ月仕事になりませんでした。

馬券で大穴を開けずに、
おいらの心に大穴を開けるとは、
秋山真一郎、最期まで憎めない男だよ。

で、
騎手生活28年間の最期を飾る2月25日。
彼の引退レースの場所は、小倉競馬場。
おいおい、よりによって北九州かよ。

台湾から金沢に帰国したばかりの、
自分のスケジュールを見ると、
なんともタイミングが悪いことに、
翌日2/26は早朝から再度の台湾行き。

翌朝、必ず小松空港に居なきゃいけない。
と考えると、断腸の思いではありますが、
金沢から小倉に向かうのは諦めざるを得ず、
小倉よりかは金沢に近い、
といっても、かなりの距離ですが、
宝塚市にある阪神競馬場に矛先を変更。
残念ながら生観戦とはいきませんでしたが、
推しの最期の勇姿を見届けてきました。

もちろん、馬券の方は、
これぞ秋山真一郎の真骨頂!
馬のことを第一に考えた騎乗で、
とんでもない目に遭いました。
おいおい、最期までふざけんな!

以上、この1週間は推し活のお陰で、
金沢→台北→金沢→宝塚→金沢→台北。

さすがにハード過ぎた強行日程と、
週末の競馬新聞の全ページに、
秋山真一郎の名前が無い喪失感とで、
フィジカル、メンタル共に消耗。
向こう2カ月は仕事になりません。
なーんてのは、許される訳も無く、
明日の昼には横浜に居るんだろうなあ。

人生初体験の推しの喪失。
これからじわじわ来るんだろうね。