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しゃちょ。のメルマガジーヌ編集後記

#666預かりもの

どーも。しゃちょです。

駅から10分程、てくてく歩いて、
宿泊予定のビジネスホテルに到着。
フロントの一番右端で名前を告げ、
チェックインの用紙を受け取っていると、
私の左隣に他のお客さんの気配がする。

あのー、大変、すみません。
大体3時間くらいになるかと思いますが、
これをフロントで預かってもらえますか。
今からタクシーで別の場所に、
行かなければならない用事がありまして、
さすがに持っていくわけにもいかないので、
どうかしばらく預かってください。
ごめんなさい。お願いします。

と、60代くらいの男性の声。
私はいち早く部屋に入りたい気持ちから、
チェックインの手続きに夢中で、
その男性の顔を振り返って見る余裕無し。
自分の名前とフリガナを用紙に書いてる。

えっ。お預かりですか。
えーっと。えーっと。
どうしようかなあ。どうなのかなあ。
うーん。うーん。うーん。
すみません。私じゃ判断がつきかねます。
ちょっと上の者を呼びますので、
確認させてもらってよろしいですか。
どうもすみません。

と、フロントの30代女性。
私は双方の遣り取りを聞きつつも、
自宅の住所を用紙に書いてる。

いやあ。そうは言ってもですね、
外に持っていくわけにもいかないので、
どうにかこうにか預かってください。
困ったなあ。どうぞお願いします。

ま、普通にトランクならね、
たとえ超大型だとしても、
二つ返事で預かってくれる筈だから、
これはトランクじゃないわな。
じゃあ、一体、なんだろ、
ゲージに入った仔犬とか小鳥か。
はたまた、違法薬物か拳銃か。
なーんて、
隣の会話が気になり出しつつも、
私は顔を上げず携帯番号を用紙に書いてる。
それから、間もなくして、

どうもどうも。お客様すみません。
副支配人の○○と申します。
うわあ。いやあ。どうしようかなあ。
うーん。うーん。うーん。
ま、お預かりするとはいってもですね、
私ども、専用の場所もございませんし、
事務所の隅に失礼の無いように、
置くことになるかと思いますが。

うわあ。結構結構。それで結構です。
いやー、ありがとうございます。
預かってもらえるだけで助かります。
3時間かそこらで戻りますので、
どうか、その間だけ、その間だけ、
どうぞよろしくお願いいたします。

おいおい、一体何なんだよ。
何を持ってんのよ、おじさんっ!
何を預けたいのよ、おじさんっ!
何を躊躇してんだ、副支配人っ!
預かっちゃおうぜ、副支配人てば!

と、さすがの私も我慢の限界、
ペンを置いて左後方を振り返り、
おじさんを見て唖然とした。

彼が両手で丁寧に抱えていたのは、
小型犬用のキャリーバッグでも、
末端価格5億円に及ぶコカインでも、
旧ソ連製のトカレフ一丁でもなく、
亀甲柄を薄く施した純白の骨壺。